2月27日に公認会計士協会が主催したDXフォーラムでは「監査のデジタル化と中小事務所の未来」と題して、規模の異なる監査法人(準大手・中規模・小規模)と一緒にパネルディスカッションに参加しました。弊社は業界のプラットフォーマーの立ち位置です。
今回のディスカッションでは、それぞれの立ち位置から率直な考えを述べて下さいと事前にモデレータから依頼がありましたが、最初の質問と回答の入りが「ADICは高いので・・・」というホントに率直な意見から始まりました。
弊社では、「AuDics」という中小監査法人のためのプラットフォームサービスを提供していて、それは単に電子監査調書システムを導入するものではありませんという前提の話をさせていただきました。AuDicsでは、監査業務の遂行環境をクラウド上に占有環境として用意します。各法人はそれぞれの方針に沿ったIT企画・調達・構築ができるようプラットフォームを提供しています。その上で、AuDicsでは一人1台のVDIを貸与端末として用意し、各ユーザーはあたかもクラウド上の事務所に集まり、監査をはじめ業務を遂行するというワークスタイルを実現しています。
AuDicsについて、ランニングコストが高いと評価されるとき、それはVDIの利用コストのことを指すことが多いということを説明させていただきました。
AuDicsでは、そのプラットフォームとしての特質を機能させるために、コスト的には高めになるVDIをセンターピンに置いた構成をとっています。そのため、IT投資に積極的な法人がAuDicsを利用しているのが現状です。しかし、パネルディスカッションの前の金融庁および会計士協会からのメッセージは「今」が電子化に取り組むタイミングというものでした。
この一年、多くの法人の方と話をして、ITインフラやセキュリティは多額の投資を伴うことから、特に小規模事務所においては、そのタイミングは規模や成長ステージによって異なるものである、というのを痛感しました。プラットフォーム全体やVDI利用は今後の課題としつつも、監査調書の電子化はできるだけ早期、かつ、リーズナブルに始めたいという法人に対してADICとして何が提供できるかをメンバーと一緒に問い続けてきました。
それが今回のフォーラムにおいて「Simply」というサービスのリリースに繋がってます。
パネル後半ではADICとして今後の取組みについて質問を受けました。大きく3つあります。
一つは利用法人の裾野を広げます。AuDicsは現在5法人、約700ユーザーが参加しています。今後はSimplyのようにステージの異なる監査法人の電子化を推進するための受け皿となるサービスを提供します。
もう一つは中小監査法人のプラットフォーマーとして、ITリソースのシェアリングをより推進することです。具体的にはインフラやセキュリティの向上、または、監査業務へ適用できそうな先進的な技術の研究を進め、有用なものはAuDics利用法人が共同利用できるようにサービスとして実装していきたいです。
最後に、AuDicsユーザーのコミュニティの運営を活発にすることです。現在参加いただいている法人に評価してもらっているのが「横のつながり」です。監査法人には共通の課題も多く、しかもAuDicsの同じプラットフォームで動いているので解決の方向性も共通であることが多いです。毎月開催しているユーザ会では、情報の共有や意見交換を行っていますが、今後発生する課題についても、皆で知恵を出し合って協力し解決していければと考えています。
上場企業監査の担い手として、監査調書の電子化の取組みは待ったなしの状態です。単独でゼロから次世代のインフラ構想を考えて構築していくのは大変です。法人内のスキル人材・投資余力・費やすことができる時間を鑑みて、AuDicsやSimplyのサービスを活用することも有用な選択肢となると思います。